ロレンシャンです。
日本の個別株投資で個人投資家が配当金と共に注目していること。それは「株主優待」です。
株主優待は、配当金と同様、「権利付最終日」に株主名簿に記載がある株主に対し、その持ち株数に応じてその会社の商品や商品券、サービス券などがもらえます。
海外ではあまり浸透していないのですが、日本ではとても人気がある制度で、中には株主優待がある銘柄だけを狙って株を購入し、「優待生活」なんて言葉も生まれました。
桐谷広人さんなんかが有名で、投資雑誌の優待コーナーには必ずと言っていいほど登場し、日々の優待生活、おすすめの銘柄などを配信してくれています。
そういう私も個別株を始めた頃は株主優待は好きで、良い優待がある銘柄を探していた時期もありました。
ただ、現在は株主優待を狙った投資は一切せず、あればラッキーぐらいの感覚に落ち着きました。
今回は、なぜ私が株主優待を狙った投資を辞めたのか、そして今の私が株主優待目的の投資をおすすめしない理由について解説します。
株主優待目的の投資をおすすめしない理由
まず最初に、私が株主優待目的の投資をおすすめしない、と言っているのは、別に株主優待がある銘柄がすべて悪いということではありません。
私も株主優待がある銘柄は保有していますし、その銘柄を長期保有してこれまで優待の恩恵も受けてきました。もちろんそれなりの含み益のある銘柄もあります。
ただ、株主優待があるから、株主優待が魅力的だから、というのが銘柄選定理由の一番上にくる、これが余り良くないということです。
ではさっそく、株主優待目的の投資をおすすめしなり理由をズバリ結論から言うと、
- 優待改悪、廃止の可能性がある
- 優待があるという理由で非常に割高になっている銘柄がある
- ポートフォリオが偏る
順番に解説していきます。
優待改悪、廃止の可能性がある
株主優待は配当金と比べると比較的簡単に改悪や廃止が決定されます。
そして次項でも詳しく解説しますが、株主優待の改悪、廃止が発表されると、基本的には株価にとってネガディブサプライズとなるので株価は下落することが多いです。
優待が無くなって株価も下がる、このようなダブルパンチを受ける可能性があるということです。
ちなみに近年、株主優待を廃止する企業が相次いでおり、理由としては、株主への平等な還元や株主優待を配布するコストが挙げられます。
株主優待は、例えば100株以上の株主には3,000円分の自社商品詰め合わせ、500株以上の株主には5000円分の自社商品詰め合わせ、といった風に持ち株数に応じて優待品を出すのですが、最低単元の100株株主の利回りが一番高くなるケースが多いです。
そうなると、100株株主が一番得をし、何万株も持つような大株主にとって株主優待は”割を食う”制度になるのです。
その結果、機関投資家、海外投資家からの圧力が強まって株主優待が見直される、といった流れです。
また、優待目当ての100株株主が増えてくると、株主に必要書類を発送したり、優待を配送したりといった手間もどんどん増えていき、結局は株主優待価値以上のコストをかけて株主優待を発送する、といったことになり、結果的にやむなく優待を廃止するケースもあります。
一方、配当金は簡単には減配できません。
赤字や減益であればやむなしですが、配当利回りや配当性向といった投資家がチェックする指標もあり、利益が増えているのに配当は減配します、といったことは起きにくいのです。
また優良企業になると、毎年配当を増配していくことを一つの目標にしている企業もあり、連続増配〇年といったステータスもあるため、そんな企業は簡単には減配しません。
株主優待と配当金、安定した株主還元はどちらかと言えば、間違えなく配当金、ということになるでしょう。
優待があるという理由で非常に割高になっている銘柄がある
冒頭でも述べた通り、日本では株主優待投資は非常に人気です。
そして非常に人気ゆえに、株主優待目当てで投資をする個人投資家がとても多く、投資系の雑誌だけでなく、生活雑誌なんかでも株主優待の特集が組まれていたりもします。
そして結構な割合の投資家が株主優待だけしか見ずに株を買うことで、株主優待が魅力的な会社は本来の企業価値よりも「割高」になっている場合があります。
例えば、下記は2023年7月31日時点の①日経平均株価、②S&P500、③日本マクドナルドHD、④イオンのPER(株価収益率)を一覧にしたものです。
No | 銘柄 | PER(株価収益率) |
---|---|---|
1 | 日経平均株価 | 15.4 |
2 | S&P500 | 22.9 |
3 | 日本マクドナルドHD | 35.5 |
4 | イオン | 105.4 |
日本マクドナルドHDとイオンは、共に非常に魅力的な株主優待を配布しており、証券会社等の株主優待ランキングでは常に上位にランクインしている銘柄です。
PER(株価収益率)とは、株価が1株当たりの純利益の何倍まで買われているかを見る投資指標で、株価の割高、割安を判断するために使用されます。
例えば、1株当たりの年間純利益が1万円、現在の株価が20万円の場合、1万円の純利益を20年間稼ぎ続ければ今の株価になるので、この場合のPERは20倍です。
日経平均株価のPERは、過去を振り返ると大体11倍~16倍前後で推移することが多く、また世界の名だたる企業が含まれた最強指標とよばれるアメリカのS&P500の場合、過去を振り返るとPERは大体15倍~25倍前後で推移しています。
一方、日本マクドナルドHDのPERは現状約35倍、イオンのPERは現状約105倍です。
もちろん、株価は現状のPERだけで判断できるものではありません。
将来の成長を見越して高いPERが許容されている銘柄もありますし、将来の減益が織り込まれていればPERは低くても割安とは言えないかもしれません。
イオンの現状のPERは105倍でも、仮に来年利益が10倍になれば、PREは10倍程度まで低下しますので、PERが105倍だから絶対にその銘柄を買ってはいけない、というつもりはありません。
ただ、将来性を考慮しても私からすればこれらの銘柄はかなり「割高」に感じます。
仮に株主優待が無かったとして、日経平均株価やS&P500指数と比較し、これらの銘柄を現在の株価で投資するでしょうか。
仮に「絶対に投資しない」、という人が圧倒的多数の場合、万が一株主優待が改悪、廃止された時は、それだけ株価の下落要因になるということです。
おそらく仮にこれらの銘柄で株主優待が廃止された場合、軽くストップ安、どこまで株価が下がるかちょっと想像できません。
優待がある銘柄が必ずしも割高とまでは言いませんが、超人気の優待がある銘柄はかなり割高なものもある、というのは必ず知っておかなければいけません。
ポートフォリオが偏る
優待生活を楽しむ場合、優待が魅力的な会社に投資していくと思いますが、それが主軸になるとどうしてもポートフォリオの偏りが発生します。
例えば、下記は雑誌「知って得する株主優待」の読者が選んだ最新の株主優待ランキング2023年版の株主優待ランキングです。調査機関によって多少ランキングの上下はありますがおおむね傾向は同じです。
順位 | 銘柄 | 優待内容 | 業種 |
---|---|---|---|
1 | イオン | 株主優待カード | 小売業 |
2 | すかいらーくHD | 自社グループ食事券 | 小売業 |
3 | 全国保証 | QUOカード | その他金融業 |
4 | 日本マクドナルドHD | 自社食事券 | 小売業 |
5 | ダイドーグループHD | 自社商品 | 食料品 |
6 | KDDI | カタログギフト | 情報、通信業 |
7 | 日清食品HD | 自社商品 | 食料品 |
8 | 味の素 | 自社商品 | 食料品 |
9 | 日本ハム | 自社商品 | 食料品 |
10 | ヒューリック | カタログギフト | 不動産業 |
11 | 明治HD | 自社商品 | 食料品 |
12 | 吉野家HD | 自社食事券 | 小売業 |
13 | コロワイド | 自社食事券 | 小売業 |
14 | 綿半HD | オリジナル特産品 | 小売業 |
15 | ライオン | 自社製品 | 化学 |
16 | 日本取引所グループ | QUOカード | その他金融業 |
17 | ヤマダHD | 自社買物券 | 小売業 |
18 | DM三井製糖HD | 自社商品 | 食料品 |
19 | 丸大食品 | 自社商品 | 食料品 |
20 | 伊藤ハム米久HD | 自社商品 | 食料品 |
明らかに小売業、食料品に業種が偏っているのが分かります。
これはある意味仕方がないことで、魅力的な株主優待をコストをかけずに配布しようとすると、どうしても原価の安い自社商品や割引券のほうが都合がよく、カタログギフトやQUOカードは不利です。
3,000円分の自社商品詰め合わせといっても、製造原価はその半分以下で済み、かつ自社製品の宣伝にもなりますが、3000円のQUOカードを配布する場合、QUOカードは3,000円で仕入れる必要があり、管理、配送なども考えると、割高なコストをかけてわざわざカードを配送しているということになります。
結局、魅力的な優待は自社で個人向けの商品や店舗を持っている小売りや食料品の会社が多くなります。
例えばトヨタ自動車や積水ハウスが自社製品を贈るなんてことは難しいでしょうし、法人向けに商売をしている会社はそもそも個人投資家に送るような自社製品がありません。
結局、魅力的な優待銘柄ばかりを買っていくと、気が付いたら業種が非常に偏っていた、ということになり、ポートフォリオとしては不健全な状態になりやすいのです。
それでも株主優待目的で投資をしたい場合
以上、株主優待目的での投資をおすすめしない理由を解説しましたが、それでも株主優待目的で投資がしたい場合は以下を気を付けるのが良いと思います。
- 株主優待目的の投資はポートフォリオの一部に留める
- 企業業績や投資指標にも気を配る
- QUOカードやカタログギフトの優待は廃止リスクが高いと認識する
順番に解説していきます。
株主優待目的の投資はポートフォリオの一部に留める
株主優待を主目的とした投資はポートフォリオの一部に留めましょう。
例えば、eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)など、広く分散された低コストインデックスファンドを主軸にし、ポートフォリオの10%~20%で株主優待銘柄を楽しむといった方法があります。
国内株式をメインにしたい方は、業種を分散した高配当株を主軸にし、入ってきた配当金を使って優待銘柄を買って優待を楽しむ、といった方法もあります。
高配当株からの配当金は優待銘柄に使うと決め、優待によって幸福感を満たすために配当金を使っていく感じですね。
あくまで投資の主軸を優待目的の銘柄にしないことが大切です。
企業業績や投資指標にも気を配る
優待目的の投資とはいえ、優待が良ければなんでもかんでも購入するのはやめましょう。
赤字だったり、減益が続いている企業は、株主優待を改悪、廃止するリスクも高い一方、業績が良い会社は優待を長期間維持できる可能性も高まります。
また先ほども解説したように、いくら業績が良くても、株価が割高な銘柄も注意が必要です。
同じ優待銘柄を買うにしても、あくまで投資指標を確認した上で割り切って買うのと、何も分からずに優待に惹かれて買うのは全く意味合いが違います。
割高なのは覚悟の上で株主優待目的、と割り切ってポートフォリオの一部で買う、これは問題ないでしょう。
QUOカードやカタログギフトの優待は廃止リスクが高いと認識する
先ほども解説した通り、QUOカードなどの金券やカタログギフトなど、自社製品が関係していないような優待は企業側からしても非常にコストがかかります。
本当は配当金として同額を配ったほうが安いにもかかわらず、優待目的の投資家のためにあえて設定していると言っても良いです。
もちろん、合理性の薄いことをやっているのですから廃止リスクも高いです。
少し業績が悪化したり、そうでなくても株主への平等還元の観点から、という名目で普通に廃止されます。
私ならば、QUOカードの優待をもらうぐらいならば同額の配当金を増額してほしいですし、企業がQUOカードの優待を設定していたら、結局は同額以上のコストを企業側が負担しているんだな、と思っています。
優待目的の投資、と割り切るならば投資してはいけないという訳ではありませんが、投資したいと思った企業がたまたまQUOカードやカタログギフトを配っていた、ぐらいの感覚が良いと思います。
まとめ
株主優待は非常に魅力があり、株主優待が家に届くととても得した気分になったり、家族でカタログから欲しいものを選んだりと、人生の幸福度が向上することは間違えありません。
冒頭の通り、私も株主優待銘柄を一部保有していますし、今でも家に優待品が届くと非常にうれしかったりします。
ただ、結局は株主優待は株式投資の本流ではなく、あくまで「おまけ」なんだ、という認識を持ってからは、株主優待ランキングとかを見て銘柄を選定することは無くなりました。
株式投資はあくまで株価が上昇することによるキャピタルゲイン、そして配当金によるインカムゲインを軸に考えるべきで、ただでさえ価格変動の大きい株式を株主優待目的で購入する、というのはやはりズレている、それが私の結論です。
今後、株主優待を導入する企業が増えるのか、減るのか、それは私には分かりません。
ただ、今後も株主優待はあればラッキーぐらいの感覚で、適度な距離感をもって付き合っていきたいと思っています。
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