こんな悩みを解決!
- 失業保険の概要や受給資格について詳しく知りたい
- FIRE、セミリタイア後に失業保険が受給できるのか知りたい
ロレンシャンです。
FIRE、セミリタイアを目指している人にとって、社会保険の知識は切っても切り離せません。
社会保険の中でも、会社を退職する前に抑えておきたいことの一つとして、雇用保険(失業保険)の受給資格についてがあります。
失業保険というと、会社を突然リストラされた人などが支給されるイメージがあるかもしれませんが、自分から会社を辞めた人も条件は違えど受給することはできます。
今回は、FIRE、セミリタイアを目指す人が失業保険を受給する際の注意点についてを調べてみました。
社会保険制度は複雑であまり興味関心が薄い人も多いですが、知っていると知らないとでは大きな差がつく所なので、歯を食いしばってしっかり押さえていきましょう。
失業保険ってどんなもの?
失業保険とは、正式には雇用保険の中の基本手当(失業手当)に当たるものですが、ここでは失業保険と呼ばせて頂きます。
失業保険について簡単に言うと、
失業状態の人が生活費の足しにするためにもらえる保険金のこと
です。
この「失業状態」というのが一つのポイントで、失業状態とは、
就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、仕事に就くことができない状態
を指します。
要するに、「私は今就職しようとしてますよ~」と申告し、実際に就職するための活動をしていることが必要ということです。
来月から次の職場に行くことが決まっている場合やもう就職する意思がない人、病気等で就職するのが困難な人は失業保険の受給資格はない、ということです。
じゃあ、FIREの場合は受給資格ないじゃん、で思われた方、
まあその通りなんですが、国もあなたの心の中がどうなっているのかまでは分かりませんので、そこは言い様ってことになります。
失業保険の受給資格
では上で解説した「失業状態」であればだれでも失業保険を受給できるのかというとそうではなく、失業保険を受給するには条件があります。
その条件とは、
- 以前の職場で雇用保険に加入していたこと
- 以前の職場の退職日からさかのぼって一定期間雇用保険を納付していたこと
の2点です。順番に見ていきます。
以前の職場で雇用保険に加入していたこと
これはそのままで、失業保険は「保険」なので、だれでもが貰えるではなく、それに備えていた人が貰えるという当たり前のことです。
雇用保険は、
- 勤務開始時から最低31日以上働く見込みがある人
- 一週間あたり20時間以上働いている人
については強制的に加入を義務付けている保険のため、正社員であれば基本的には全員加入していると思ってよいです。
パート、アルバイトの場合は、自分の職場が上記条件を満たしているかを一度確認しましょう。
以前の職場の退職日からさかのぼって一定期間雇用保険を納付していたこと
雇用保険は、加入していたとしてもどのようにして会社を辞めたかによって受給資格や受給できる期間が異なります。
それが一般に「自己都合退職」か「会社都合退職」かの違いです。
自己都合退職は、自分の都合で会社を辞めた場合で、転職や独立、寿退社等はこちらですね。会社都合退職はリストラや倒産等で会社を辞めざるを得なくなった場合と、「特定理由離職者」に該当する場合です。
特定理由離職者とは、希望退職に応じた人、家庭の事情で今の職場を辞めざるを得なくなった人等、やむを得ない理由で退職せざるを得なかった場合に適用され、会社都合退職とすることができます。
ただ一般的なFIRE、セミリタイアの場合は自己都合退職に該当しますね。(たまたま会社が希望退職をやっていてそれに応じた場合は会社都合退職にできます。)
そして雇用保険を受給するためには、自己都合退職か会社都合退職によって、下記の条件があります。
自己都合退職 | 退職日からさかのぼって2年間の内、1年間以上保険料を納付していたこと |
会社都合退職 | 退職日からさかのぼって1年間の内、6カ月間以上保険料を納付していたこと |
FIREの場合は一般的に自己都合退職となりますので、働いていた職場で過去2年間の内1年間以上雇用保険を収めていれば受給対象者です。逆にまだ就職して1年も経ってないとかであれば失業保険は受給できません。
失業保険の支給開始日、支給期間、給付額
失業保険の支給開始日
失業保険の支給開始日も自己都合退職か会社都合退職かによって異なります。
まず失業保険は退職後、ハローワークへ行って受給手続きをする必要があります。
そして手続き終了から7日間の待期期間を経て、会社都合退職の場合は待機期間終了後すぐの支給となるのに対し、自己都合退職の場合は2~3ヵ月の給付制限期間後の支給となります。
FIRE、セミリタイアでの退職の場合、自己都合退職となるので、退職後2~3ヵ月程度は失業保険を受けることができない点には注意したいですね。
失業保険の支給期間
そして支給期間ですが、こちらも自己都合退職か会社都合退職かによって異なります。
以下表に支給期間をまとめました。
FIRE、セミリタイアする人は、自己都合退職の被保険者期間が10年以上~20年未満、もしくは20年以上の人が多いのでないでしょうか。
その場合120日(4ヵ月間)、もしくは150日(5ヵ月間)の間、失業保険を受給できることになりますね。
失業保険の支給金額
最後に支給金額についてですが、受給できる総額は以下の計算式で表されます。
支給総額 = 給付日数 × 基本手当日額
基本手当日額は以下の計算式です。
基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率(50%~80%)
賃金日額 = 退職前6ヵ月間の給与総額 ÷ 180
なんか難しい言葉が沢山出てきましたね。
順番に簡単に解説していきます。
給付日数は、前項で解説した支給期間の対象日数に当たりますので、例えば自己都合退職で被保険者期間が10年以上~20年未満の場合は120日間です。
基本手当日額は一日当たりの受給金額です。失業保険は月単位ではなく日単位で計算しています。
そしてこの一日当たりの受給金額ですが、年齢ごとに下記の通り上限額が定められています。
30歳未満 | 6,945円 |
30歳以上45歳未満 | 7,715円 |
45歳以上60歳未満 | 8,490円 |
60歳以上65歳未満 | 7,294円 |
賃金日額は基本手当日額を計算する上でベースとなる金額で退職前6ヵ月間の給与÷180日で計算できます。
給付率は年齢によって50%~80%が設定されており、賃金が低いほど高い給付率となります。
失業保険金の計算については、以下サイトで大まかな計算が出来ますので、気になる方は一度計算してみてください。
雇用保険の給付額(失業給付金)の計算(外部サイト)
失業保険の手続き
失業保険を受給するために、退職後まずはハローワークへ行き、雇用保険の受給手続きをします。この受給手続きの時、受給資格の決定と後述する離職理由についての判定が行われます。
その後、別日に定期的開催される雇用保険説明会へ参加し、求職活動の方法や初回「失業認定日」の案内を貰います。
そしてその後はは4週間に1回の失業認定日へハローワークへ訪問し、その度に失業状態であることを「失業認定申告書」で申告する必要があります。
申告内容としては、
- 失業認定を受けようとする期間に行った求職活動
- 失業認定を受けようとする期間の労働収入
の2点です。
先ほども言いましたが、失業保険は「失業状態」の人が「就職する意思」がある場合のみ受給できますので、求職活動の実績を報告する必要があるのですね。
前回の失業認定日から2回以上、以下の求職活動の実績を報告します。(初回の失業認定日は1回)
- 求人への応募
- ハローワークが行う職業相談、職業紹介、講習、セミナーを受ける
- 許可、届出のある民間機関が行う職業相談、職業紹介、セミナーを受ける
- 公的機関が実施する職業相談、講習、セミナーを受ける
- 別相談ができる企業説明会に参加する
- 再就職のために資格や検定を受検する
求人サイトで企業を登録、観覧するだけでは実績とはならないので注意しましょう。
FIRE時に失業保険は受給できるのか
さて、失業保険の基本的な仕組みが分かったことで、いよいよ本題のFIRE時に失業保険をもらう場合の注意点について見ていきましょう。
まず失業保険は「失業状態」の人がもらえる保険であり、次に就職する気のない人は受給できませんので、ハローワークに行って就職する意思を表明する、すなわち受給手続きをしましょう。
そしてFIREといっても、離職後に全く仕事をしないのか、離職後にある程度仕事なり、個人事業主として細々と働くのかによって、失業保険を受給する際の注意点が異なってきます。
- ファットFIRE、リーンFIER(働かないFIRE)の場合の注意点
- バリスタFIRE(ある程度の労働収入を得る)の場合の注意点
- サイドFIER(ある程度の副業収入を得る)の場合の注意点
上記3つのパターンでの注意点についてそれぞれ見ていきましょう。
なお、それぞれのFIREの詳しい解説は以下記事を参照下さい。
ファットFIRE、リーンFIREの場合の注意点
ファットFIERとリーンFIREは、退職後は働かない、正に正真正銘のFIREです。二つの違いとして、ファットFIREは十分な資産があり働かなくても好きに遊んで暮らせる状態、リーンFIREは少ないお金で細々と暮らしていくイメージです。
どちらにせよFIRE後は労働収入、すなわち給与所得がなくなるため、失業保険を受給することができます。
ただし上記でも説明した通り、月に一回ハローワークへ通い、求職活動の実績を提出する必要がありますので、求職活動は行いましょう。
ちなみに、ファットFIREやリーンFIREの場合、大抵の人が不動産収入や株式の配当収入があると思いますが、これらの収入があっても失業保険は需給できます。
不動産収入や株式の配当収入は「給与所得」ではないため、給与所得がない状態、すなわち失業状態なのであれば失業保険は受給できるという解釈です。
バリスタFIREの場合の注意点
バリスタFIREとは、FIREした後もある程度は雇われとして労働収入を得て収入を補填する考え方です。
先ほども言った通り、失業保険は「失業状態」の人が貰える保険であり、基本的に仕事をしている人は受給できませんので、直ぐに次の仕事を始める場合は失業保険の受給は諦めたほうが良いでしょう。
ただし、パート、アルバイトで以下の条件に当てはまる場合、就労ではなく、「内職、手伝い」とみなされ、失業保険を受給することができます。
- 勤務開始時から最低31日以上働く見込みがない人
- 一週間あたりの労働時間が20時間未満の人
- 一日の労働時間が4時間未満(4時間以上働いた日は受給できずに繰り越し)
※一日分の収入から1,282円を控除した額と失業保険の日額の合計が、賃金日額の80%以上になる場合は失業保険が減額されます。
注意点として、配偶者や親の健康保険、年金の扶養に入れない場合、国民健康保険、年金保険の自己負担が重くなるため、失業保険の受給を諦めてでもパート、アルバイトを始めてしまったほうが得になります。
配偶者や親の健康保険、年金の扶養に入れる場合は、失業保険を受給し終えてからパート、アルバイトを始めるのが良いと思います。
サイドFIREの場合の注意点
サイドFIREとは、FIREした後もある程度は自分の力で収入を補填する考え方です。
要は、資産収入に副業収入(サラリーマンを辞めているのでもはや副業とはいいませんが‥)で補填する考え方ですね。
サイドFIREの場合は言い方を変えれば個人事業主としてデビューするわけなので、厳密にいうと「開業届」を提出し、私は個人事業主として事業をスタートさせますよ~、と宣言をしてから事業を始めます。
そしてこの開業届を提出してしまうと、個人事業主の状態、すなわち失業状態ではありませんから、失業保険を受給することは出来ません。
ではどうするのかというと、開業届を出さずに事業をスタートさせれば失業保険は受給できます。
開業届は、ビジネスで反復的に利益を得ようと「決断した時」から1ヵ月以内に提出してください、とされており、この決断した時というのはかなり主観的で曖昧なので、退職後すぐに開業届を提出しなければいけない、ということはありません。
ただし、
- 開業届を提出していないと確定申告で青色申告が選択できない
- 既に副業収入がある場合、収入額によっては失業保険が減額される、もしくはもらえない
- ファットFIREやリーンFIREと同様、定期的にハローワークに通っての求職活動は必要
等の注意点もあります。
既に収入があり、失業保険が貰えるか分からない場合、一度ハローワークに問い合わせてみると良いと思います。
保育園に通わせている子供がいる場合の注意点
さて最後に重要な注意点として、保育園に通わせている子供がいる場合、FIRE後の失業保険は受給できない可能性が高いということです。
何故ならば、基本的に保育園は仕事を辞めた場合、猶予期間内(自治体によって異なるが2ヵ月程度)に次の仕事を見つけないと、子供が保育園を退園しなければいけないからです。
自己都合退職の場合、失業保険の支給までに2~3ヵ月の給付制限期間があるので、受給することは難しいですね。
元々子供を幼稚園やこども園へ転園させる覚悟でFIREしたのならば良いですが、今の保育園で継続して子供を預かってほしい場合、保育園へ「就労証明書」を提出する必要があります。
そうなるとパート等で働くか個人事業主として開業届を提出する必要が出てきますので、「失業状態」ではなくなるため失業保険はもらえません。
保育園の継続規定や猶予期間については地方自治体によって対応がバラバラなので、一度市役所の保育課に確認しましょう。(確認するのは保育園の先生ではなく役所です。)
ちなみに認定こども園の場合、子供が3歳以上であれば、FIRE後も2号認定から1号認定に切り替えることで引き続きこども園は継続できます。
まとめ
ここまで失業保険の仕組みと、それぞれのFIRE後の失業保険の受給について見てきましたが、いずれにせよ仕事を辞めて何もしなくても失業保険を受給できる、というわけではなく、毎月ハローワークに通い、求職活動の実績を提出する必要があります。
失業保険については、ハローワークへ電話で問い合わせをすることで親切に教えてくれる場合も多いので、是非一度問い合わせをしてみて下さい。
FIREを決断した人にとって、失業保険は次の収入までの繋ぎとしてとても助けになります。これまでサラリーマン時代にしっかり雇用保険を払ってきたのですから、受給することにためらいは要りません。堂々と受給しましょう。
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