ロレンシャンです。
最近、若い人の間では「出世したくない」という人が増えているという話をよく聞きます。
現に私の会社の若手も、少なくとも表向きは出世に対して消極的な言葉を発する人は多いです。
- 出世しても責任と給与が合っていない
- 出世すると仕事量が増える
- 出世すると人間関係が面倒
- 出世するとやりたい仕事が出来なくなる
上記は何れも出世をしたくない人が良く挙げる理由ですが、本当にそうでしょうか。
私は会社員として14年間、自分の会社組織を内部から見てきましたし、営業職を経験したこともあり、商社や顧客など色々な会社の方と話をしてきたり、色々な会社の人事を見てきましたが、結論、上記は間違っていると思っています。
私は、今後も長い期間に渡って会社員を続けていくつもりならば、出世を否定するのは後々大きなリスクがあると考えており、今回は私の会社員経験を元に「出世」について書いていこうと思います。
あくまで「会社員を続けるなら」という前提条件があり、数年以内にFIREしたい、独立を目指している、とかの人は当てはまらないことをご了承ください。
出世しないこと、出世できないことの大きなリスク
まず、出世しないこと、出世できないことで生じるリスクは以下の通りです。
- 会社での居心地が悪くなる
- リストラの対象になりやすい
出世したくない、という人はこの二つのリスクを甘く見ている傾向にあると感じています。
順番に解説していきます。
会社での居心地が悪くなる
若いころは平社員の方が気楽だと感じることもあるかもしれませんが、年を取るにつれて状況は変わっていきます。
自分の同期や後輩がどんどん出世していく中、自分だけが平社員のままというのは精神的につらいですし、将来的には自分が教えていた後輩が上司になるといったことも普通に起こりえます。
自分の同僚や後輩に仕事の割り振りだけでなく、査定、異動などの権限がある状況は考えただけでもゾッとしませんか。
私が営業で通う取引先では、若手をどんどん要職に登用する会社も増えてきています。
良く取引のある某代理店(商社)は、40台前半で取締役になった方がいますし、30代前半で営業所の所長クラスに普通に抜擢されます。そして出世できなかった人は、自分より若い人の下で働くことに耐えられなくなって辞めていく人が多いです。
出世できなかった時の居心地の悪さは業種によっても異なり、製造業の製造現場や研究、開発、プログラマー等の専門職は、比較的回りに同じ仲間が多いのに対し、販売、サービス、事務的な職種は居心地は悪くなりやすいと思います。
一旦居心地が悪くなると、仕事のパフォーマンスが低下してさらに居心地が悪くなるという悪循環に陥りやすく、結果的に会社を辞めざるを得なくなったり、重要な仕事を与えられなくなって時間が過ぎるのをひたすら待っているだけの窓際族になってしまいます。
一日8時間を週に5日。無気力で過ごすにはあまりにも長すぎる時間で、後から人生を振り返った時に「何をやっていたのだろう」と後悔する可能性が高いと思います。
リストラの対象になりやすい
会社の業績が悪化し、リストラが行われる場合、中高年平社員は真っ先に対象になります。
日本の給与体系は今でも年功序列が色濃く残っているため、たとえ平社員でも長く会社に居るとそれなりに給料が高くなっており、かつ仕事のパフォーマンスも高くなった給料に見合っていないため、会社としても一番切りたい人ということになります。
私の会社でも業績が悪化し、去年希望退職という名のリストラが行われました。従業員の約10人に1人という大きい規模で、しかも対象者は50歳以上。
結果的には50歳以上の非管理職の多くの人が会社を去っていきましたが、管理職で退職したのは極僅かでした。
もちろん名目上は管理職も希望退職の対象でしたが、実態としては出世した管理職の人が、同年代(同期)の出世できなかった人を切る、という何とも残酷な結果となりました。
普段はぬるい空気が流れていた私の会社も、その時ばかりは流石に社内に独特の空気を感じたのを覚えています。
リストラの場合はFIREとは異なり、自分の意図しないタイミングでいきなり会社を放り出されることになるため、例えば子供が高校、大学に通っている時に急に職を失ったりすると、人生設計が大きく崩れやすいです。
またリストラに会うと、その後転職をしたとしても、結果的に生涯賃金は想定より大きく落ち込む可能性があります。
出世すると大変は本当?
冒頭で挙げた出世をしたくない、という人がよく言及する理由。
- 出世しても責任と給与が合っていない
- 出世すると仕事量が増える
- 出世すると人間関係が面倒
- 出世するとやりたい仕事が出来なくなる
私はこれらの意見に対して疑問符をもっているため、私の意見を順番に解説していきます。
出世しても責任と給与が合っていない?
まず会社員である限り、どれだけ偉くなって仕事に失敗しても、金銭的な「責任」はとる必要はありません。
大型プロジェクトが大失敗して会社に1億円の損害が出たとしても、その1億円をプロジェクトリーダーが肩代わりする必要はなく、せいぜいプロジェクトから外されたり、異動させられる程度です。
確かに、出世することで高いレベルの仕事、成果を要求されることは間違えありませんが、それは自分の成長にもつながりますし、やりがいも出てくると思います。
そして給与についてですが、確かに定年まで平社員でいることができれば、楽をしてそれなりの給与をもらい続けることができると考えがちですが、それは「定年まで平社員でいることができれば」です。
終身雇用制度自体が壊れつつある中、この定年まで平社員でいる、というハードルが年々上がっていっているのが現状です。
年齢が上がるほど、先ほど解説した「会社での居心地が悪くなる」「リストラの対象になりやすい」という2点のリスクが大きくなり、途中で会社を辞めざるを得なくなった場合、生涯賃金は出世した同期と比べて大幅に低くなってしまいます。
これらリスクも考慮すると、出世をした人としていない人では、見た目上の給料以上に差がつく可能性があるということです。
出世すると仕事量が増える?
出世すればするほど見なければいけない範囲(部長なら部全体、課長なら課全体)が大きくはなりますが、出世と仕事量との相関関係はありません。
出世をすると仕事量が増えるのではなく、仕事の質が変わります。
むしろ部下を多く持てる分、仕事の割り振りを上手くできれば自分がこなす業務量自体は減ると思います。
私の会社でも、仕事を任せるのが上手な上司は普段は余裕をもって仕事をし、普通に定時に帰ったりしてますが、仕事を任せるのが下手な上司は常に忙しそうで、部下に任せればよい仕事を自分で抱えてしまい、本当に自分がやるべき仕事が疎かになったり、家庭を疎かにしたりしてしまいます。
出世をすると、仕事のやり方次第でラクにもなるし忙しくもなりますが、自分の裁量権が大きくなることは間違えなく、仕事自体の楽しさは増すと思っています。
出世すると人間関係が面倒?
これは全くの逆です。
出世できなかったほうが会社の人間関係はより面倒になると思います。
私の会社では、例えば同じ40代、50代の人でも、出世をしてある程度の役職を持っている人のほうが、出世をしていない人よりもはるかに楽しそうに仕事しています。
仕事が楽しい、楽しくないの基準は会社の人間関係が良いか悪いかの影響が大きいですが、出世した人には人が集まってきますので、良い人間関係も構築しやすいです。
これは出世していない人の人格に問題があるということではなく、会社は人間を「役職」で判断する人が一定数いる、ということも影響しています。
出世するとやりたい仕事が出来なくなる?
これも逆です。
出世すればするほど仕事の幅は広がり、やりたいことにチャレンジしやすくなります。
実際、会社が大きくなればなるほど平社員という立場で出来ることは限られ、出世すればするほど大きな仕事ができるようになります。
もちろん、製造業で実際に手を動かして組み立てをするのが好き、プログラムや図面を自分で描くのが好き、という人もおり、やりたい仕事が人それぞれ異なるということはありますが、年を重ねて平社員のままだと、いつまでもやりたい仕事をやらせてもらえるとも限りません。
仕事は能力ではなく役職でする、という言葉もあるぐらい、仕事をする上で役職は大切だと思います。
良い仕事ができれば出世なんてしなくて良い、ではなく、良い仕事をやり続けるためには出世して権限や裁量を持つ必要があるということですね。
それでも出世したくないと言う人はどうすれば良い?
ここまで会社員を続けるなら出世は目指したほうが良い理由を解説してきましたが、それでも出世はしたくない、という人はどうすれば良いでしょうか。
どうしても出世したくないならまず、「なぜ出世したくないのか」をもう一度考えてみましょう。
- そもそも出世に全く興味がない
- 今の会社では出世したくない
自分の中でどちらが当てはまるでしょうか。
そもそも出世に全く興味がない場合
この場合は、自分が社内の人間の中で一番得意なことを見つけ、そこを徹底的に強化するのが良いと思います。
私の会社でも、出世こそしていないものの、エクセルのマクロプログラム作成だったら○○さん、取説の英語翻訳だったら△△さん、社内試験装置のトラブルの時は□□さん、というように、色々なジャンルでまずはこの人に頼むのが間違えない、という人がいます。
そして何かに特化している人は、たとえ出世していなくても非常に重宝され、この人は絶対必要、という社内コンセンサスが出来上がっています。
組織が大きくなればなるほど仕事の役割分担も細分化されるため、会社としても、なんでも中途半端な人よりも、他は全くダメでも何か一つの能力が特化している人は価値が高いのです。
出世が嫌ならばonly oneを目指す。それも一つのサラリーマン道ですね。
今の会社では出世したくない場合
この場合は転職を検討しても良いと思います。
出世自体は否定しない、でもこの会社では絶対出世したくない、ということは、自分が所属している会社の仕事内容にそもそも興味がないか、その会社の管理職に金銭面や待遇面で全く魅力がないかです。
とはいえ出世を否定すれば前述の通り、年を重ねる事に居心地が悪くなるか、リストラに合う可能性があるかのリスクに晒されていきますし、先ほども言った通り、一日8時間を週に5日という会社員生活は、無気力で過ごすには長すぎます。
これからも長く会社員を続けるのであれば、生き生きと仕事ができ、出世したい、と思えるような会社に所属したほうが、自分の成長にもつながりますし、後からの後悔は少ないのではないかと思います。
まとめ
サラリーマンは出世がすべてではない。
もちろんそれはそうかもしれませんが、個人的に、これからも会社員を続けていくつもりにもかかわらず出世を否定するのはもったいない考え方かなと思っています。
確かにこれまでは、窓際で仕事も少なく毎日定時でそれなりに給料をもらって、という人はいたでしょうが、それがこれからも許されるかどうかは分かりません。
今後は国全体の生産性向上のため雇用の流動性を高めていく必要があり、政府もそれを後押ししています。ジョブ型雇用の拡大など、終身雇用が徐々に崩壊しつつあることから、私は窓際が許されない時代は迫っていると思います。
会社での居心地が悪くなったり、リストラの対象になりやすかったりと、今後中高年平社員の立場はますます厳しくなります。
会社員をこれからも続けていくのならば「出世」を否定するのはやめましょう。
出世したくないと感じている場合、そもそも出世に全く興味がないのか、今の会社では出世したくないのかを考え、後者であれば会社を変えるといった選択肢も検討する必要があります。
せっかく会社員として働くと決めたならば、出世したい、と思える環境で働きましょう。
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