ロレンシャンです。
インデックスファンドに長期投資する上で気になるのがコスト。
運用期間が長くなれば長くなるほどコストの違いが運用成績に大きく影響してくるため、出来るだけコストの安いファンドを選びたくなりますね。
インデックスファンドを運用する場合、継続的に発生する費用としてファンドへの報酬である信託報酬が大切なのはもちろんですが、実はファンドの運用には売買委託手数料や有価証券取引税などといった信託報酬以外の「隠れた費用」が存在します。
そしてこの隠れた費用も合計して計算されるのが「実質コスト」です。
コストを比較して投資をする上で、証券会社のファンド紹介ページや目論見書に書かれている信託報酬を比較するだけでも十分といえば十分ですが、より細かくコスト比較したい場合はこの実質コストにも注目する必要があります。
今回はこの実質コストの計算方法、そして代表的な低コストインデックスファンドである、eMAXIS Slim S&P500インデックス、SBI V S&P500インデックス・ファンドの実質コストの比較をしてみたいと思います。
二つのファンドの実質コストを計算してみる
それでは実際にeMAXIS Slim S&P500インデックス、SBI V S&P500インデックス・ファンドの実質コストを計算していきますが、その前に二つのファンドの信託報酬を比較しておきます。
ファンド名 | 信託報酬 |
---|---|
eMAXIS Slim S&P500インデックス | 0.09372% |
SBI V S&P500インデックス・ファンド | 0.0938%程度 |
SBI V S&P500インデックス・ファンドは、米バンガード社が運用する米国ETF「Vanguard・S&P500 ETF【VOO】」へ投資をすることでS&P500指数と連動させるファミリーファンド方式のため、SBI V S&P500インデックス・ファンド自体の信託報酬0.0638%+VOOのコスト0.03%を合計して0.0938%程度となっています。
二つのファンドの信託報酬を比較すると、若干ですがeMAXIS Slim S&P500インデックスのほうが低コストとなります。
では実際に二つのファンドの実質コストを計算してみましょう。
eMAXIS Slim S&P500インデックスの実質コスト
まずはeMAXIS Slim S&P500インデックスの実質コストを計算します。
実質コストを計算するために、eMAXIS Slim S&P500インデックスの運用報告書を参照します。
運用報告書の中で、「1万口当たりの費用明細」という項目を確認します。
実質コストの計算式は
実質コスト = 信託報酬 × 1万口当たりの費用の合計 ÷ 1万口当たりの信託報酬
で表されます。
上記表から計算式に当てはめてみると、
実質コスト = 0.09372% × 0.108 ÷ 0.096 = 0.1054
となります。
よって、eMAXIS Slim S&P500インデックスの2022年4月26日~2023年4月25日までの実質コストは「年率0.1054%」となります。
SBI V S&P500インデックス・ファンドの実質コスト
次にSBI V S&P500インデックス・ファンドの実質コストを計算します。
同じくSBI V S&P500インデックス・ファンドの運用報告書を参照します。
運用報告書の中で、「1万口当たりの費用明細」の欄を確認します。
計算式に当てはめると、
実質コスト = 0.0638% × 0.074 ÷ 0.064 = 0.0737
SBI V S&P500インデックス・ファンドの場合、ここからVOOのコスト0.03%が乗っかるので、
実質コスト = 0.0737 + 0.03 = 0.1037
となります。
よって、SBI V S&P500インデックス・ファンドの2021年9月15日~2022年9月14日までの実質コストは「年率0.1037%」となります。
実質コストを比較してみる
それぞれ実質コストを計算することができましたので、改めて信託報酬と一緒に比較をしてみましょう。
ファンド名 | 信託報酬 | 実質コスト |
---|---|---|
eMAXIS Slim S&P500インデックス | 0.09372% | 0.1054% |
SBI V S&P500インデックス・ファンド | 0.0938%程度 | 0.1037% |
見かけ上の信託報酬はeMAXIS Slim S&P500インデックスのほうが安いにもかかわらず、実質コストを計算してみるとSBI V S&P500インデックス・ファンドのほうがコストが若干安いということが分かりました。
ではSBI V S&P500インデックス・ファンドのほうがeMAXIS Slim S&P500インデックスよりも優れたファンドなのか、eMAXIS Slim S&P500インデックスを積み立てしている人はSBI V S&P500インデックス・ファンドに乗り換えたほうが良いのか、というとそう単純な話でもありません。
実質コストは毎年変動する
この実質コストですが、毎年変動します。
しかも事前に実質コストがいくらになるかというのは分からず、運用報告書を見て、結果的にこれだけコストがかかった、という事後報告のみとなります。
例えば、2022年4月26日~2023年4月25日のeMAXIS Slim S&P500インデックスの実質コストは年率0.1054%でしたが、その次の一年も同じコストである保証はありません。
来年は二つのファンドの実質コストは逆転するかもしれませんし、来年もSBI V S&P500インデックス・ファンドのほうが実質コストは安くなるかもしれませんが、こればかりは長い目で結果を見て評価していくしかないと思います。
一方、信託報酬というのは公表されている数字が基本となりますので、信託報酬の改定が無い限り、eMAXIS Slim S&P500インデックスのほうが信託報酬が若干安いという事実は変わりません。
そういう意味では実質コストについては、結果的に極端に多くのコストがかかっていた、とかではない限り、そこまで気にしすぎても仕方がないと言えるかもしれません。
同じ指数へ連動するファンドも同じリターンにはならない
同じ指数への連動を目指すファンドの成績を決める要素として、実質コスト以外にも変動要素があります。
eMAXIS Slim S&P500インデックス、SBI V S&P500インデックス・ファンド、どちらのファンドもS&P500への連動を”目指す”ファンドなので、必ずS&P500と連動している訳ではありません。
買い付けや売却のタイミングなどにより、若干の誤差は必ず発生します。
例えばSBI証券にて、eMAXIS Slim S&P500インデックスおよびSBI V S&P500インデックス・ファンドのトータルリターンを比較してみましょう。
ファンド名 | トータルリターン(1年) |
---|---|
eMAXIS Slim S&P500インデックス | 23.84% |
SBI V S&P500インデックス・ファンド | 23.75% |
2023年7月26日現在から遡った1年間を見ると、eMAXIS Slim S&P500インデックスのほうがトータルリターンは上回っています。
先ほどの実質コスト、信託報酬を改めて表に付け加えてみると、
ファンド名 | 信託報酬 | 実質コスト | トータルリターン(1年) |
---|---|---|---|
eMAXIS Slim S&P500インデックス | 0.09372% | 0.1054% | 23.84% |
SBI V S&P500インデックス・ファンド | 0.0938%程度 | 0.1037% | 23.75% |
両ファンドの実質コストを比較する時期に若干ズレがあるため、実質コストとトータルリターンが逆転している、という断言まではできませんが、少なくともこの一年間だけを見ると、eMAXIS Slim S&P500インデックスのほうが運用は上手かったということになります。
どちらのファンドに投資するのが良い?
それでは、S&P500連動のインデックスファンドに投資をしたい場合、どちらに投資をするのが良いか。
結論、どちらでも良いです。
純資産総額がeMAXIS Slim S&P500インデックスのほうが多いため、どちらか一つ選べと言われればeMAXIS Slim S&P500インデックスを選ぶでしょうか。
ただ、本当に99点のファンドか98点のファンドか、といったレベルでの議論で、どちらにせよ優良ファンドであることには変わりありませんし、おそらく長期的なトータルリターンも誤差の範囲でしか変わらないです。
それよりも、S&P500に連動するファンドを選ぶか、それともTOPIXに連動するファンドを選ぶかなど、どの資産クラスに投資するか、という議論のほうが明らかに大切です。
ただ、今回解説した実質コストを見る方法については覚えておいて損はありません。
例えば、今後信託報酬が安いファンドが出てきた時、実質コストも含めて本当にコストが安いかをしっかり見てから買っていく、といったワンランク上の資産運用が出来るからです。
来年から新NISAも始まり、ますますインデックスファンドとの付き合いが深まっていく中、運用報告書で実質コストを確認し、より良いファンドを選んで投資をしていきましょう。
おすすめの証券会社
ネット証券の口座を開設するなら、私も使っている「SBI証券」がおすすめです。
- 国内最大手で取引額No.1
- 商品ラインナップネット証券トップクラス
- 国内株式の売買手数料完全無料
- 口座開設、口座管理手数料無料
- 株式は1株から購入可能
初めての証券口座開設はもちろん、2つ目の口座として持っておいても損はありませんし、新NISAでの利用もおすすめです。
以下リンクより資料請求、口座開設可能なのでよろしければご利用下さい。
その他、おすすめのネット証券を以下にまとめてありますので、この機会に口座開設を検討ください。
コメント